2021/07/20
デザイナーからのコメント:
「悪ではあるがウルトラマン」を念頭に置いてアレンジしました。
ベリアルは悪を象徴するような存在ではありますが、元がウルトラマンである事が一目で分かる事も重要だと感じたので、ウルトラマン特有のシンプルなシルエットを意識しつつ悪役特有の前傾姿勢で筋肉質な上半身のフォルムを強調して造形しました。
体表モールドもシンプルさを意識しつつ、開口した時に見える歯や手の大きな鉤爪から肉食動物を連想し、サメのような少し硬く分厚い皮膚のイメージを盛り込んでみました。赤い部分は柔らかく、黒い部分が硬い、という設定にして、色だけでなく造形でも体表にアクセントをつけました。
ウルトラマン特有のすっきりした顔の造形はそのままに、口内の歯を少し有機的に鋭くするだけに留めました。特徴的な手の鉤爪は、なるべく可動させたかったので各指に可動関節を入れてみました。指の関節造形は骨や甲殻類をイメージして生物的なラインを取り込みました。頭部はアレンジを抑えてオリジナルイメージの維持に努めましたが手のデザインは邪悪さを少し強調してみました。
アレンジするにあたり、様々な角度でウルトラマンという存在を自分なりに解釈しようと考えてみました。巨大な生物なのか、スーツを着た知的生命体なのか、この形状から連想出来る物は何か…等。その辺りの独自のイメージを自分の中だけでもしっかり構築出来ていなければアレンジするにしても形に説得力が出せないからです。
過去にウルトラ怪獣を何度かアレンジして造形する事があり、その時と同じように「もしも実在したら?」というニュアンスで自分がウルトラマンベリアルをアレンジすると、ウルトラマンの持つ「人知を超えた神のような存在」という一面が薄れ、邪悪なクリーチャー的な面が強くなり過ぎて「悪ではあるがウルトラマン」というコンセプトから離れてしまいます。
なので今回はオリジナルから受けたウルトラマンベリアルのイメージをアクションフィギュアとして魅力的にする事を意識してアレンジと造形をする事にしました。結局ウルトラマンのイメージは最後まで明確に掴みきれませんでしたが、この掴みきれない存在というのもウルトラマンの本質のような気がして今は納得しています。
ウルトラマンベリアルが登場してからもう10年以上が経ちます。その後ベリアルは劇中で様々な怪獣達と融合し、さらに禍々しい姿に変化していきます。その原点とも言えるウルトラマンベリアルを愛する人達に喜んでもらえる物は、と自分なりに考えて制作しました。
大山竜